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医療の全体像
薬局を利用してもらう前に、皆さんにぜひ知っておいて欲しいことをまとめました。
非常に大事なことなので、ご一読ください。
医療の全体像
病院にかかる理由は、ほとんどの方が「病気を治してもらう」ためだと思っているでしょう。
もちろん間違っているわけではありませんが、より正しく理解してもらいたいと思います。
例えば熱が高い時に、普通は「38℃以上になったら受診しよう」と考えるところを、「原因は何か」
「悪化しないか」「自然に治るのか」を考えるのが医療なのです。
医師が行うのは、病気の原因が何なのかを突き止めると共に、緊急性・重篤性・転帰について判断することです。
 | 緊急性=どの程度のスピードで進行する病気なのか。 |
 | 重篤性=命に係わる病気や、後遺症の残る病気でないかどうか。 |
 | 転帰 =放っておいても軽快する病気なのかどうか。 |
これらを判断することを「診断」と言い、そのための情報を集めることを「診察」と言います。
診察と診断
診察には、触診・問診・聴診といった一般的なイメージでの「診察」の他に、血液検査・放射線検査・エコーなどの検査や、血圧手 帳・紹介状・お薬手帳などの外部情報も含まれます。
今ある症状から考えられる病気を全て挙げたうえで、必要な検査を行い、診察で得られた情報を元に可能性の低いものを排除していくのが「診断」の基本です。診察、診断、治療は必ずしも順番に進むわけではなく、同時進行することや逆戻りすることもあります。
治療
診断を元に、病気を治すためにアクションを起こすことを「治療」と言います。単に手術、処方をすることだけではありません。大きく5つに分けられます。
 | 根本治療=病気の原因を直接改善する。 例:細菌性の肺炎に抗生物質を処方する等。 |
 | 対症療法=一時的に苦痛を緩和する。 例:解熱剤や咳止めを処方する等。 |
 | 機能調整=身体機能全般を調整する。 例:熱による体力の消耗に漢方薬を処方する等。 |
 | 経過観察=時間を置いて様子を見る。 例:薬を5日分処方し、再診を指示する等。 |
 | 患者教育=自身での対処方法を教える。 例:抗生物質以外の薬は中止して良いと伝える等。 |
診察室で行うのはあくまでも「治療方針」の決定であり、治療の大半は自分自身で行うものです。
薬を出されても、患者自身が処方 を無視して薬を飲まなければ治療が行われたことにはなりません。
また治療とは一度の診療で完結するものではありません。前回の治療方針の効果を判定し、今後薬を増減するか現状維持するかなどを決め、次の治療方針に反映していく必要があります。
患者はチーム医療の中心
医師の他に医療に関わる職種は、看護師、事務員、薬剤師、検査技師、理学療法士、栄養士、ケアマネージャー、ソーシャルワーカ ーなどです。医師以外の医療スタッフは、診察に必要な情報を医師に提供したり、事務作業や一部の治療を代行したりします。
医療を野球のチームに例えた時、一般の人が思い浮かべることが多いのは「劇場型医療」です。
これは医師(投手)が主体となって 、他職種(野手)がサポートするという形ですが、患者自身は客席で「劇場」を見ているだけ、というものです。これに対して、本来の医療とは「主体的医療」です。医師は治療方針を決める「監督」、 情報を提供するスタッフは「コーチ」、一 部の治療を代行するスタッフは「野手」です。そして「投手」としてチームの中心にいるのは患者自身です。
例外として、手術などの場合には「監督」(医師)自身が試合に参加することもありますし、在宅医療や介護福祉が中心の場合は、 ケアマネージャーが「監督」になることもあります。チームが最大の力を発揮するには、全員の意識が統一されていることが大事です。医師の指示通りに治療を受けるだけではなく、治 療方針を理解しチームの一員として治療に参加することで十分な効果が得られるのです。野球において投手がやってはいけないといわれるのは、フォアボールとホームランです。この2つだけは野手がどんなに頑張っても絶対に防ぐことができません。医療においても、患者が正面から治療と向き合っていなければ誰も助けることはできないのです。
保険診療
保険に加入している人間から保険料を徴収し、病気やケガをした人間に保険金を支給するのが、健康保険の基本的な仕組みです。
日本は国民皆保険であり、ほぼ全ての人間が健康保険に加入しています。
日本の保険診療は毎年15~20兆円近い赤字を出しており、これを税金で補填しています。そして国家予算90~100兆円のうち、半分以上は税収で賄えずに国債を発行しています。保険診療の赤字を削減するには、費用対効果の低い治療を見直すことと同時に、同じ治療でもその効果を最大限に発揮することが大 事です。つまり医師、他職種、患者自身がそれぞれ努力しなければ減らせません。保険診療自体が公費によって賄われている以上、医療の効果を損なうような行為はゆるされないのです。
セルフメディケーション
保険診療を介さない内服治療には自費診療と市販薬があります。自費診療は、保険を介さず全額自己負担で行うこと以外は全く同じです。一方、市販薬を使うということは「医師の診察や診断を受けずに、患者自身で治療方針を決める」ということです。セルフメディケーションについては、よく「市販薬を上手に使うこと」と説明されることがあります。これは本質を無視した、誤解を招きやすい不適切な表現です。誰もが経験しうることだからこそ、あいまいな表現にごまかされずに、正確に理解していてもらいたいと思います。本来のセルフメディケーションとは「患者自身が保険診療を受けるかどうか判断すること」です。
市販薬を選べば医師や他職種の力を借りることができる場面は大きく制限されますが、現在では薬局がその窓口としての機能を果たすことが求められています。医療全体の仕組みは、保険診療でも自費診療でも市販薬でも変わりません。ただし、その都度適切なものを患者自身が選択する必要があります。医療に必要なものには、経済的資源(お金)、人的資源(人手)、物的資源(薬、機械)があります。
安易に保険診療を多用すると、各資源の不足につながります。例えば人的資源が不足すると、過疎地域での医師不足や診療待ち時間の増加につながります。診察室で2時間待ちになったりするのも、元をただせばこういったところに原因があるのです。
必要な時に気兼ねなく病院にかかるためには、普段から不要な受診を避け、本当に受診が必要なケースかどうか見極める必要があります。